Things We Said Today

2019/8/13 現時点でのN国党の話
2019/6/13 ありがとう20周年
2019/1/11 「シベリア超特急FINAL」 映像化の条件
2018/12/18 「声優初挑戦」というフェイク
2018/12/16 コアファイターとGファイターの魅力
2018/9/2 今時!ファミコンソフト 「激闘スタジアム!!」 必勝攻略法
2018/1/6 星野仙一氏の光と影
2016/6/13 十七年の地図
2016/1/16 マスコミが書けないCoCo壱番屋・ビーフカツ事件の裏話(ただし推測)
2016/1/11 ゼロから始めるプラモデル



8/13
現時点でのN国党の話

 れいわ新撰組の山本太郎氏、おそらく参院選である程度勝てる算段があったと思うんですよ。実際2議席獲得したわけで、そこら辺、票読みのカンみたいなものはあったと思うんです。ところが、彼の知略を持ってして、「選挙権メディアの主役は俺」ではなかったんですね。N国党の立花孝志氏が全部持って行ってしまった感じがします。

 さて、賛否両論というか、主に「否定」が先に来るN国党、正式は「NHKから国民を守る党」、気付けばネット流行語大賞も「松本、動きます」に次ぐ2番目くらいに「NHKをぶっ壊す!」が来そうなくらい目立ちまくってます。この政党、なんだか突然出てきたわけで、有識者とか文化人も案外ずれた捉え方をしている人が目立ちます。たとえば元ネット右翼を自称する評論家・古谷経衡氏は「悪ふざけでこんなに投票するやつがこんなにいた。この国はアホばかりだ」と激怒。現代ビジネスに寄稿された近藤大介氏(評論家)は、「れいわ新撰組が極左政党、N国党は極右政党で、この国の政治が4極化しだした」と述べてます。

 これらはそう見えるんだけれども基本的にずれた考え方だと思っています。まず、古谷氏。ネタで投票する人が100万人いた!という話。もちろん、Twitterで「ネタで入れたったwwwww」という人もいたんで、ある程度はそうだと思うんです。ただ、実は選挙区と比例区は分けて考えたいんですね。

 選挙区の場合、支持政党であっても「こいつかあ…」という人が出ていることがあり得ます。あるいは、定数と立候補者数を考えると、なんとなく「まあこの辺が受かるな」ということが何となく分かってしまう場合があります。そこで、選挙区の場合「まあN国党でいいか」という、白票扱いで1票入れた人がいることは事実だと思うんです。ところが、比例区は違うんですよ。比例区は基本的に死票ではないんです。まして今回はネットどぶ板の山田太郎氏(山本太郎じゃないですよ)が立候補されていました。「選挙区はともかく、比例区は山田太郎さん」という人も多かったんです。特にTwitterで「53万票取ろうぜ」という運動もあって、私はノリで入れた人はどちらかというとこっちじゃないかと思うこともあるんです。ですので、比例区で100万票弱というのは、ノリだけで手に入る票ではないはずなんですね。

 また、「極右政党だ!」というのも違和感があります。立候補者の中に古参のネット右翼がいたそうなのですが、それだけで極右政党というのはちょっと決めつけが早い気がします。そもそも欧米の極右政党というのは、反移民や外国人排斥、反地球主義(反グローバリズム)が主で、N国党の主張は「公共放送のスクランブル化」です。どう考えても合うわけがないんです。

 英語で書いてご覧なさいよ。

In Japan , there is most extreme right political party that called "The Party to Protect the People from NHK", they insist that public broadcasting NHK must be scrambled.
In Japan, there is the most extreme right political party that is called "The Party to Protect the People from NHK". They insist that NHK, the Japanese public broadcasting station must apply scrambled broadcast.
(Twitterで若干の誤りを指摘していただきました。ありがとうございました)

とかですかね?日本にある極右政党N国党は、公共放送NHKをスクランブル化しようと主張しているなんて書いた日には、世界中から「ぬるい極右だなあ」なんて笑われちゃうと思うんですよ。

 で、思うんですけれども、N国党は実は極左政党だと思うんですね。いや、将来的に立花孝志氏が退いた後、別の保守的な人が組織を引き継げば別ですけれど、現時点では極左政党だと思うんです。

 実は、真鍋厚さんという評論家の方が「N国党を茶化してるけど、庶民は鬱屈してる」という文章を書いてまして、現時点で評論家が書いた文章の中では一番マシな文章だと思うんです。(なんつー上から目線)

 というのは、普通の評論家、文化人というのはだいたい庶民じゃないので、庶民がどういう思いでNHKを見てるか分からないんですね。古谷氏だって、彼はまともに会社勤めしたとは言えないので、世の中の一般人がこういう思いでNHKを見ているというのが分かりづらい。

 そもそもNHK受信料というのは、税金以外で唯一理不尽に徴収されるお金だと思うのです。実は今回、N国党が躍進しましたので、「次はJASRACから守る党だ」などと冗談が出ています。実際作るという人もどこまで本気かいらっしゃるようですが、そもそもJASRACは日本人で納めている人が一握りです。そもそも分母の少ない人から参院比例区で100万票を集めるのは非常に難しいんですね。N国党が成立できたのは、受信料負担対象者=ほぼ有権者全員だったからです。ですから「次のN国党」は、まず出てきません。

 で、なんでこのN国党を評論家さんたちが見誤るかというと、NHKが嫌われている理由を知らないんですね。評論家の方は「ネット上における反マスコミの機運」とか、「集金人の態度」とか「不公平感」などを挙げられるんですけれど、違わないけどそうじゃないんです。もちろん、半分親方日の丸でのうのうと暮らし、年収は平均で1120万円とされています。大手マスコミの記者はこの国において貴族階級であるといえるほど高い年収を誇ります。記者をけなす人の一部には、やはり収入に対するやっかみのような話をする人もいらっしゃいます。そこで、受信料が高いから嫌われているのだ、もっと下げればいい、というずれた話になっていってしまうんですね。

 NHKが嫌われている理由、いろいろありますが、大きなもののひとつに集金理由の理不尽さがあるのです。NHKスクランブル放送を実施した場合、15年くらい前の与太話に「個人の契約は跳ね上がるだろう」というものがありました。見られなくすればみんな見たくなって契約する、という考え方です。つまり、お金のない学生、「見てないから」と契約を拒むんですけれども、スクランブル放送になると何か大きな不安を感じ、契約に踏み切ると言うんです。普段は見てないのだけれど、「全く見られない」という場合には何かお守りがなくなるような感覚になるだろう、と。今は分かりません。インターネットも充実、スマホもある、ネットフリックスやアマプラでコンテンツも多いので、わざわざNHKとそれでも契約するか、というのはちょっと分かりづらい。

 ところが、スクランブル化は個人契約が増えても、NHKはやりたくないんです。放送法は関係ないんですよ。スクランブル放送を実施した場合、NHKにとって頼みの綱の法人契約が全部パーになる、という問題があります。今回N国党が出てくるまで、NHKとの法人契約は知らない人が多かったようです。ホテルのテレビにも受信料契約が必要なのですが、ホテル1軒で1契約ではなく、ホテル1室ごとに1契約が必要なのです。さすがに多少の割引はしているようですが、ホテルや病院など、部屋数が多ければ当然契約数も増えます。これがスクランブル放送になれば、「当ホテルはNHKが見られません」の一言で契約が切られてしまうのです。

 立花孝志氏は「ラブホにもNHKが来るんですよ!誰が女抱く前にNHKを見るんですか!」と叫んでましたし、ニコニコ動画では「普通エロチャンネルだよな」と指摘されてました。うーん、逆に深夜の民放だと見入って女を抱くタイミングを逃すので、NHKを流すとそそくさとテレビを切ってコトを始めやすいと主張する人もいて…まあ私には関係ないんですけれども。

 いや、それだけではありません。今は違うかもしれないんですが、20年くらい前、個人経営の食堂にNHKが来たそうです。食堂があって、奥に住居があるんですね。2契約が必要だと言うんです。理由は、住居で1契約、店で1契約だと。確かにその店舗では昼時にテレビを置いてあって、流してるわけです。「ここは敷地全部自分の家だ、1契約でいいじゃないか」という主張もNHKは耳を貸さなかったそうです。

 さらに、近年は受信料を負担していただくと言うよりも、「どうにかしてふんだくる」ことを考えているように見えるんです。評論家さんたちはNHKにお金を払っていて、あまり考えたことがないんでしょうが、庶民の中には「地上波テレビなんか見ない、テレビはゲーム機とDVD再生用でいい」という人がいるんです。以前NHKはこの使途の場合、「受信料徴収の対象ではない」というスタンスだったそうですが、近年はその主張を全て削除しています。

 昨年、ソニーから法人向けブラビアが出て、一部で大きな話題になりました。これが、地上波テレビチューナー一切未搭載。NHKも民放も映らない、業務用モニタだったんです。業務用モニタはあったんだけど、高画質のブラビアが出たことに家電マニアは驚きを持って迎え入れました。

 また、そのブラビアはチューナーがない代わりに、Androidが搭載されていたんですね。そうすると、インターネットの配信アプリ、TVer(ティーバ)をインストールすることで、いずれ「NHKは映らないけれど、民放は見られる」仕様になる腹づもりだったんです。これに悪のりしたガジェット通信などが「これなら受信料免除だよね?」と突っ込んで一部界隈は大盛り上がり。その時点では、民放のTVerにNHKは参加せず、これまでのNHKオンデマンドだけでやっていくつもりだったようです。

 このニュースの流れたわずか1ヶ月後、突如NHKはTVerへの参加を表明しました。

 朝日新聞などは「ユーザーへの利便性を考えてのことらしい」などと書いてましたが、どう考えても「この先もしAndroidテレビが広まれば受信料が徴収できない。TVer入れた時点で受信料負担を求められるように参加しておこう」という意図が見え見えだったんです。いや、もちろん公式に「そのうちNHKの映らないテレビが出てくると困るんで」なんて言ってませんよ?でも、ガジェット通信が「これで受信料は要らないよね?」と突っ込んだわずか1ヶ月後にTVerへの参加が決まったあたり、どう考えてもタイミングがよすぎるんです。

 さらには、スマホやカーナビなどでも受信料義務があるという判例が出たあたりで「オイコラスマホもってんのやろ、払えや」みたいな恫喝音声がYouTubeに出てくるとか、「インターネット同時配信」への取り組みというのも、「とにかく受信料収入確保になりふり構えない」という事情があると考えています。ここら辺は、現代ビジネスに掲載された境 治氏の論考が適切だと考えています。

 この「NHKがなりふり構わなくなってきた」段階で登場したのがN国党だったのです。「庶民の貴重なお金を少しでも多くふんだくるなんてケシカランですよね。だいたいNHKって不正経理が常態化してますんでね、受信料払っても無駄なんですわ、NHK職員の私腹を肥やすだけ。」みたいな話をしつつ、「こういう風に集金人に応答してください」「それでも帰らないときはこういう風に対応してください」「それでもだめならスマホで動画撮ってデータを送ってください」という具体的な対応を指示しているんですね。

 こうしてみると、N国党というのは、むしろ極左政党に属するはずなんです。れいわ新撰組が、いわゆる旧来の弱者、障害者であるとか、外国人であるとか、貧困層だとか、そういう分かりやすい弱者のための政党なのだとしたら、N国党はだめなオッサンと兄ちゃんのための、まじめに働いても報われない人々のための政党なんじゃないかと思うことがあるんです。別にN国党に投票しても、自分の境遇はマシにならないだろうが、少しでもNHK職員をこっち側に引きずり下ろせるなら、N国党に賭けていいだろう、という考え方です。

 そう、久米田康治先生の「かってに改蔵」「さよなら絶望先生」に出てくる、だめだめ七夕ネタに近いんです。「私が幸せになりますように」という願い事は不可だけど、「アイツが不幸になりますように」がOKっていう、あれです。「この中の短冊、全部願いが叶いませんように!」という超ネガティブオーラ。そう、N国党とは、やっかみによるネガティブオーラが支える政党だったんです!

 もちろん、支持する人々は、半分以上国家に属する(と思っている)NHKですので、遠慮はしません。渡辺喜美氏と組んだのも当たり前で、それまで「公務員の給料を下げろ!」だった渡辺氏の主張が「NHK職員の給料を下げろ!」に替わっただけなのです。

 この段階でもうN国党を極右政党などと思う人はおりますまい。N国党というのは、れいわ新撰組をしのぐ極左政党、おかげで座標的に1周して、逆に極右に見えてしまう政党なのです。立花氏もそこの支持をわきまえているので、これを書いている段階の昨日(8/12)、マツコ・デラックス氏に直接抗議だ!とテレビ局出口に殴り込み。その様子を多くの人々に批判されても「だったら俺をテレビに呼べばいいんだよ!」と怪気炎を上げたのです。つまり、既得権益への攻撃が支持の源泉なんですよ。そうなると、既得権益の大きな受益者なら、誰でも噛みつけるんです。極端な話、この先共産党がN国党に噛みつけば、それこそ「立花孝志が、共産党をぶっ壊す!今日は不破哲三さんのご自宅前から動画をお届けします!」みたいなことだってやりかねないわけです。

 N国党は筋書きのないドキュメンタリーを作っていると思っていましたが、この暴れっぷりはもはや擁護の域ではなく、兇犬と呼んでも差し支えないほどです。触れたら最後、噛みつかれるか支持するかの二択しかない。こんな文章書いたら、私だって噛みつかれるんじゃないかと思うほどです。

 とはいえ、地上波の総合テレビ、Eテレのスクランブル化はともかく、法人契約の強欲とも呼べる契約方針は見直されてもいいだろうと思うんです。また、経理の際の不始末や、地域スタッフにやくざがいるとか、外国人労働者に「契約しないと、今から入管に電話してやるぞ」という発言があったらしいとか、そういう不手際(というよりも人権侵害)はもっとクローズアップされていいはずです。障害者から「半額でええで」と、それでも半額徴収していることも批判が多いです。そして、「インターネットやスマホからも、テレビと同じように受信料地上波だけで1300円を徴収できるか」ということも議論の余地があるでしょう。

 せっかくそういう「実は多くの人にとって切実な問題」がある以上、「マツコ出てこい!」とかではなく、「こういう課題がありますよ。NHK逃げるな、出てこい!」という動画の方がいいんじゃないかと思います。そしてNHKには、これに対抗して、京都アニメーションの劇場アニメを流すことにして、放映権料を普段の10倍払ったとか、「受信料はちゃんと役に立ててますよ!」という姿勢を見せてほしいなあと思いますね、ハイ。


6/13
ありがとう20周年

Thanks to 20th Anniversary
Since 1999/6/13

やめどきを逃しただけですが、まだ見に来てくださる方々には心より感謝申し上げます。
まだ続けるよ?やめないよ?


1/10
「シベリア超特急FINAL」 映像化の条件

 今年もよろしくお願いします。

 もうすっかり忘れ去られた作品ですが、「シベリア超特急」という映画シリーズがあります。1996年に第1作が公開され、これまでに劇場版4作品、舞台版を再編集した映像作品が2本あります。監督・主演は、映画評論家として名高い故・水野晴郎氏です。

 実は、このシリーズ、完結編のクランクイン前に水野晴郎氏が体調を崩され、そのまま亡くなられるという不幸に見舞われています。2008年に水野晴郎氏が亡くなられてからは「完結編を作る!」と関係者が宣言するものの、毎度そのまま頓挫、ということが繰り返されてきました。後述しますが、関係者の中には金銭トラブルもあって、正直完結編の映像化(一応シナリオだけは漫画作品で公開されたらしい)はめちゃくちゃ難しいのが現実だと思います。ただ、この難しい条件さえクリアできれば、制作が絶対にできないわけではないかなと思います。なので、完結編、作るならこうではないか、という話を書いておこうと思います。

 制作にあたっての壁は3つです。ひとつ目は、著作権を管理していると思われる、水野晴郎氏の弟子、西田和昭氏が詐欺とも思える金銭トラブルを抱え、行方不明になっていることです。なんてこった、この時点で制作のハードルはとんでもなく上がります。(西田和昭氏はシリーズにも重要キャラで出演されていましたし、完結編に向けて動かれていたので、大変残念です。)

 権利関係がクリアでなければ作れませんので、この段階で普通はアウトです。

 残り二つの壁は、リンクしているのでまとめます。「主演の水野晴郎氏が鬼籍に入られている」ことと、「予算」です。西田和昭氏の金銭トラブルさえなければこのふたつだけだったのですが、なんにせよこの壁が大きいのです。

 まず、水野氏がいないという問題。新規カットは撮れないわけです。ハリウッドみたいに100億円くらい予算があれば、グリーンバックで既存の俳優さんに顔だけ合成して…みたいな手法もできるのですが、そんな予算はありません。全編アニメというのも予算がかかるので難しいでしょう。そうなると、予算的にできる手法で考えるしかありません。

 それでも出すとなると、方法を考えなければなりません。まず考えられるのが、バンク処理です。これまで撮られたシーンをつなぎ合わせて出すという方法です。ライブフィルムとも言いますね。予算的には安く済みますが、「使いたいシーンがない」場合は難しいです。

 違和感承知で3DCG(ゲームの龍が如くみたいな)を使うという方法もあります。アップシーンはCGアニメで処理し、同一フレームに他の俳優が出る場合は後ろ姿の代役(ボディダブル)で済ませてしまうのです。この世界には「劇場版Zガンダム」みたいな違和感の塊みたいな作品も存在するのですが、この方法は多少なりとも違和感が出てしまいます。

 前述したボディダブルを利用し、顔を絶対に映さないで撮ってしまう、という方法もないわけではありません。岡本喜八監督版「日本の一番長い日」の、八代目松本幸四郎氏演じた昭和天皇みたいな感じです。ただ、これは割と「重要人物で敢えて顔を映さない」サスペンス映画なんかの手法なので、ずーっと山下閣下の顔がカットされていると違和感はかなり大きくなると思います。よく考えると「シベ超」はサスペンス映画なのですけれども。

 予算面も非常に問題が大きいです。昨年「カメラを止めるな!」という映画が300万円で制作されたという話がありました。映画で300万円って、とんでもなく安いです。映画を作るとなると、少なくとも1000万円はかかるだろうなと思います。

 予算面で映画を作るのが難しい、という場合、敢えて映画ではなく舞台で作ってしまう、という方法があります。実はこれ、シベ超では2回も使われていて、舞台を再編集して映画にしてしまうのです。この場合、制作費の一部を入場料という方法で補填できます。カメラも何台か回しまくって、映画にするわけです。

 あとは、とにかくシナリオを工夫することで、予算を節約する方法が考えられます。元々シベ超は、密室劇という手法で撮っていて、密室劇だと割に安く済むのです。密室で何かが起きる、という話でもっていくわけですが、この場合山下閣下をどう出すかが難しくなります。

 シナリオではなく撮り方の話に戻りますが、最近だとスタジオ借りるより外ロケでぱっぱと撮った方が安いと言うことで、いわゆるイケメン俳優とアイドル女優のデートムービーなんかがそれでよく撮ってます。シベ超は、外ロケだと「戦前の時代」が表現できないので、そこは難しいですね。採石場でロケするわけにも行きませんし。

 シベ超3だと、過去の因縁を現代でどうのこうのって話だったのですが、もし自分が考えろといわれたら、「現代で見付かった山下閣下の遺言」みたいな話から、話が転がっていく、というのが現実的かなあと思います。これだと山下閣下もバンク処理でいけそうですし。ただ、個人的にはそれだとただのつまらない映画で、「シベ超」の幕引きには似合わない気がします。

 個人的には、ドキュメンタリー映画でやったらいいかなあと思うんですよね。なぜシベ超が始まったのか、なぜあんなに続いたのか、制作の舞台裏、そして完結編を作るべく動いてきた関係者の思いと挫折……。決定稿をもとに作られたコンテを声優か関係者が吹き替えて、「こうなるはずだった」という表現にするんです。そしてラストは、西田和昭氏が出資詐欺で逮捕されるシーンで終わらせるんです。シベ超伝説の幕引きは前代未聞のドキュメントで終わらせる、という展開。アリだと思うんですけどねえ。


12/18
「声優初挑戦」というフェイク

リハビリ企画第2弾。

 ネットでニュースを見ていると、割とどうでもいいけど思わず見てしまうニュースが流れてきて、結果時間が浪費されるという問題があります。いろいろなニュースがあります。元横綱の息子で自称靴職人がスピード離婚とか、ある芸能人がブログでこんなことを言っていたとか、そんなん見ても人生1ミリも得しないのに、ついクリックするニュースというものがあります。

 さて、そういうニュースでよく流れてくるものの中に、「声優初挑戦!」という記事があります。新作アニメや洋画の吹き替えにタレントや顔出しの俳優が出演するというものです。こういうニュースの場合、インターネット上では、「やめろ」「誰も得しない」「断れよ」などといった怒りの声が渦巻きます。時には本職の声優さん達からも「うちらの仕事ってこの程度なの?」という疑問の声が出ますが、ここではその是非を問うものではありません。実は、「声優初挑戦」というキャッチコピーが、しばしばフェイクということがあるのです。

 つまり、ある俳優さんが「○○、声優初挑戦 劇場アニメに出演決定」などというニュースが流れたとします。ところが、その俳優の出演経歴を見ていくと、実はアニメ出演は初めてではなかった、ということが意外にあるのです。つまり、「声優初挑戦」という見出し自体が、とんでもないフェイクニュースになっていることがあるのです。

 ここからマスコミ許せぬ!フェイクばっかり流しやがって!という話にもっていくこともできるのですが、なぜこのような報道が起きてしまうのか、という考察をしたいと思います。

 まず考えられるのは、記者が無知だった、ということです。新聞記者というのは、博識であることより、体力があって文才があることの方が重要ですので、「これくらい知ってるだろ」という話を知らないことが多々あります。先日、森口博子氏の出演されたラジオ番組で、アナウンサーが「機動戦士ゼットガンダムの主題歌でデビューされ」と発言し、ネット上では「ゼータガンダムを知らないのか!?」と騒然となりました。また、ずいぶん前ですが、当時中日ドラゴンズ球団の監督だった落合博満氏がバンダイホビーセンターを表敬訪問され、「落合博満専用ガンダムエクシア」をプレゼントされご満悦、という話がありました。その時の中日スポーツの見出しは「落合博満ガンダム宣言 チームでエクシアになれるのはオレだけ」だったのですが、その際記事の右下に「一番のお気に入りはウイングガンダム」として、テレビ版「新機動戦記ガンダムW」前期主役メカのウイングガンダムが載っていました。実は野球記者が「好きなガンダムは?」と質問した際、「ウイングガンダムだ!」と即答されていたのですが、横で長男の落合福嗣氏が「OVA版の、ゼロカスタムの方ですからね!」としっかり補足されていたそうです。結果、「あ!オレが好きなのはゼロカスタムなのに、ウイングガンダムが好きって事になってるじゃないか!」と、大変落胆されたという話があります。

 野球記者ガンダム知らないの!?と驚きのあなた!世間一般ではガンダムの名前は知ってる人こそ多いのですが、ちゃんと見た人は少ないのですよ。実際、その工場訪問の際、落合博満氏はワインレッドのジャケットで、落合信子夫人はピンク中心のコーディネートでした。この服装について、福嗣氏が「ガンダムのキャラをイメージしてますが、誰か分かりますか?」と記者に逆取材。記者全員に気まずい沈黙が流れる中、模型誌の記者が「シャアとラクスですね」と発言して、野球記者全員「誰のことだよ…」と絶句したそうです。

 したがって、「今度のアニメには○○さんが出演されます」と聞き、「お、初出演やな!」などと原稿を書き、結果として物笑いの種になる、という話が出てしまうのだと思います。

 いや、違う!フェイクニュースだ!世間を騙してる!とご主張の方、落ち着いてください。与党議員の汚職疑惑を捏造したら間違いなくフェイクニュースでしょうが、タレントの出演歴を詐称しても世論はおかしくならないでしょう。みんななんとなく「新聞記者は博識でいろいろ詳しい」というイメージをもっているのですが、実は新聞記者は博識ではなく、案外無知で、自分で調べることもしない人種だと言うことです。

 もう一つ考えられることがあります。むしろこちらが大きいと思うのですが、発表者側にとって「初出演」ということを話題作りにしたい、という事情があります。

 これは少し話が違いますが、60年代に活躍したグループサウンズ、一時期同窓会番組が何度か作られました。そこで司会者が「再結成は何年ぶりですか?」と水を向けると、「20何年ぶりです!」と笑顔でコメントされる、なんてことがありました。冷静に考えると2年前に他局でやってた番組で再結成してるし、ちょっと前に「なつかしのGSコンサート」でもばっちり再結成して営業してただろ!と思うわけですが、ここで「再結成は2ヶ月ぶりですね。この前は、郡山の営業で再結成してました」なんて言われたら、番組が成り立たないわけです。

 アニメの作り手にとって、莫大な予算を投入したアニメ、転けたら取り返しが付かないわけです。なんとしても話題になって欲しい、そのためには出演者にも意外でビッグなあの人に出てもらう。そうなったら、「なんとあの大物が初出演」の方がいいわけです。「大物俳優さん、2年ぶり3度目のアニメ出演」では、どうも具合が悪いのです。結果、「なんとアニメ初出演です!」という話が出てきてしまうわけです。

 少し前ですが、浄土真宗親鸞会という宗教団体が「なぜ生きる−蓮如上人と吉崎炎上−」というアニメを制作しました。主演は里見浩太朗氏。「59年の俳優人生の中で、初のアニメ声優、初の僧侶役に挑戦しました!初めてづくしでしたが、大いに楽しんで演じさせて頂きました。」というコメントを出されています。僧侶役はともかく、「アニメ声優初」はウソで、2004年にNHKで放映されたテレビアニメ「アガサ・クリスティの名探偵ポワロとマープル」にて、エルキュール・ポワロを演じています。(ちなみにミス・マープルは八千草薫氏)

 この事実を知っている記者の場合、「里見浩太朗氏、劇場アニメ声優初挑戦」という文でうまくごまかしているのですが、なんにせよ「初挑戦」が宣伝上の売りの場合、そのまま使わざるを得ないのです。それは、劇場アニメの場合、新聞やテレビでCMを打つことが多いのです。記者がうかつに「んなことねえだろ」と発言して「おたくには広告出さないぞ!」と言われるより、「初挑戦」とそのまま垂れ流して広告出稿してもらった方が美味しいわけです。結局カネか!絶望した!カネ汚いマスコミに絶望した!

 ……失礼しました。

 少し前だと、劇場版「トランスフォーマー」にヒロイン役で「しょこたん」こと中川翔子氏が出演された際、「しょこたん、声優初挑戦!」という記事が載りました。さすがにこれは「しょこたんの仕事知らなさすぎだろ」という批判が出て、しばらくして「洋画吹き替えに初挑戦」という文面に訂正されていましたが、「しょこたんは洋画の吹き替えもやってるよ!」という突っ込みが……。

 しょこたんについては、「アニメ声優に挑戦」という表現は不適切で、「アニメ声優も行うマルチタレント」くらいのくくりでいいと思うのですけれど、どうも売る側も「しょこたんがでてるよ!」と宣伝せざるを得ないようです。宣伝も大変だ。

 ただ、近年はネットで「フェイクだ」「無知だ」とたたく自分のような人が増えてしまったせいか、記事を書く前にある程度下調べをしたと思われる記事も増えてきました。

 たとえば、仲間由紀恵氏ですが、下積み時代にテレビアニメ「HAUNTEDじゃんくしょん」に出演していたり、劇場版「機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-」に出られていたことは、そこそこ知られています。アニメ映画「ジョバンニの島」に出演したときには、「ナデシコ以来久々の劇場アニメ出演」と報じたメディアがありましたし、「ジュラシック・ワールド」の吹き替え出演が決まった際には、「初の洋画吹き替えを担当」と、適切に報じられています。

 また、神木隆之介氏の場合、8歳の時に「千と千尋の神隠し」に出演して以来、短編を除いて8本のアニメ映画に出演されています。実は、今回「神木隆之介、声優初挑戦」って書いてあった記事を探したのですが、さすがにここまで来るとそういうメディアは見当たりませんでした。チッ。

 ですので、今後は「声優初挑戦!」という記事は、よっぽど記者が無知で下調べをしていないか、制作側が「初挑戦ってことにしてでも宣伝しないとまずい状態」なのか、どちらかであると思われます。

 ちなみに、「タレント本人が出演をなかったことにしたいケース」も想定していろいろ探したのですが、「デジモンセイバーズ」の新垣結衣氏は公式サイトのプロフィールに明記されていました。香取慎吾氏、草なぎ剛氏における「姫ちゃんのリボン」「赤ずきんチャチャ」も調べたのですが、最近の公式サイトは過去の出演歴を全てなかったことにしているので「アニメだけ」というわけではないそうです。つーかこのふたりはSMAPにいたことすら黒歴史なのかもしれません。最近の俳優さんは、案外「出たのは事実だし」という感覚なのかもしれません。


12/16
コアファイターとGファイターの魅力

 リハビリ企画です。こつこつ文章書いてみようってことで。

 少し前に、ガンプラで「ジェガン ブラストマイスター」という商品が出ました。近作「ガンダムビルドダイバーズ」の登場メカ(登場ガンプラ?)で、「ジェガン」に、ガンダムシリーズ各作品からいろいろなビーム兵器が装備された強力なメカという設定です。どうも最近はスタッフの中で「ビームが強い!」という認識があるのか(実際ファーストガンダムの頃からビームは強いという設定でしたけれども)、その前に出た「ガンダムX 十魔王」も、全身あちこちにビーム砲がありました。正直、自分はビーム兵器だけのメカはあまり好きでなく、「ビームライフルとバズーカとミサイル装備」などのように、いろいろな武器を持ってるメカの方が好きです。だいたい、実際のジェガンに、あんなにビーム搭載しても、すぐエネルギー切れになって使えないだろ、リアルじゃないなあ、なんて思うわけです。

 という話をすると、まず間違いなく「いや、そもそもアニメなんだからリアルじゃないだろ」という話で、これは確かにそうです。よく「リアルロボットアニメ」と言われますが、巨大ロボットはどう考えても現実の兵器としては使いづらいですよね。無人戦車とか、「パトレイバー」に出てきそうなAI警備ロボットとかならその先ありそうですが、2足歩行で人間型のロボットが地上を歩き回って戦うっていうメリットは、正直ないわけです。身もふたもない話ですけど。

 とはいえ、自分もそういう「ウソ」は承知で楽しんでいるわけですが、そういうウソもウソっぽくない方がいいなあ、と思うのです。……とはいうものの、どう考えてもウソだけど、いとおしいものもあるわけです。それが、コアファイターと、Gファイターです。

 コアファイター、Gファイターというのは、アニメ「機動戦士ガンダム」に出てきた戦闘機(※)です。(※正式に言うといろいろ違うんですが、知らない人にはこれで通します)コアファイターは変形してガンダムのコクピットになり、万一の時には脱出装置も兼ねています。Gファイターは、途中で出てくるガンダムのパワーアップメカで、ガンダムと合体して戦車などになるメカです。子どもの頃、ずっとガンダムは変形合体しないものだと思っていたので(一応ゼータガンダムが変形するのは知っていたけれど、自分の子どもの頃までのガンダムだと変形合体するものの方が少数派だったのです)、初めて見たファーストガンダムの再放送でGファイターが出てきたときはとてもびっくりしました。

 コアファイター、Gファイターともにリアルに考えていくと問題が多く…そもそも飛べません。当たり前ですね。そんなことを言い出すと、フィクションに出てくる飛行機メカのほとんどは飛べませんから(ごくまれに作者が航空機マニアで飛べる設計をしたメカが出てくることもありますが)、そこを突っ込むのは野暮というものです。

 まずコアファイター。実は、ガンダムのサイズと、設定上のコアファイターのサイズを考えると、そもそもガンダムの腹部に収納することができません。(ガンダム18m、コアファイター8.6m)
 さらにコアファイターは全幅6.8mで、いろいろなイラストから考えるとコクピットブロックはかなり幅が狭く、実際1/1スケールで再現してみたら、アムロはともかくリュウさんは絶対乗れないんじゃないかってくらい狭い操縦席です。(※というウソを本当にするべく、プラモデルの1/35コアファイターは、設定画に比べてコクピット部分を幅広く取っています。これには賛否あり。)
 また、エンジンブロックのある胴体左右からは、小型ミサイルランチャーがせり上がってきます。ミサイルがせり上がる。収納されてるわけですよ。エンジンはどこ?超小型?という疑問が尽きません。

 Gファイターはもっとウソまみれです。そもそも胴体が2つに割れて、ガンダムを収納するのですが、つまりそれは「胴体内部は空洞である」ということを意味します。確かに輸送機など、運ぶための空間を設けて飛ぶ飛行機もありますが、現実的には無理があります。(ということになると、合体スペースのあるスーパー戦隊のロボットなんかも当然無理があります)
 しかもGファイターは割れると、後ろ側のブロックが不自然に伸びます。実はこれ、旧キットの場合再現しきれず、「Gファイター形態では使用しないが、ガンダムと合体したGアーマー形態でのみ使用するパーツ」を使うことで処理しています。
 なお、これは全くの余談ですが、テレビ版ガンダムではGファイターの後ろ側に、コアファイターが合体した「Gスカイ」というモードがあるのですが、この時のコアファイターがとんでもなく大きいのです。旧プラモデルもそれを再現しているため、縮尺を計算すると1/144スケールではなく、1/72スケールくらいのコアファイターが付属しています。

 とはいえ、これだけ「リアルじゃない」ポイントがあっても、やはり「ファーストガンダム」というアニメを構成していたコアファイターとGファイターには、独特の魅力が存在しています。
 ランバ・ラル戦では、脱走していたアムロを呼び戻すべく、ガンタンクの上半身を排除してコアファイターが出撃。ハモン戦では、同様の方法で、リュウがアムロを救うべくコアファイターで特攻死。Gファイターは、それまで通信兵だったセイラさんが出撃し、イマイチ戦闘シーンで影の薄かったフラウ・ボゥに出番を与えていますし、後半では予備機にスレッガー中尉が乗り、「哀しいけど、これ、戦争なのよね!」の名台詞を引き出しています。そして最終回。破壊されたガンダムからコアファイターで脱出するアムロ。BGMは、劇場版では故・井上大輔(忠夫)氏の名曲「めぐりあい」です。

 実は、安彦良和氏のマンガによるリメイク、「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」では、当初ガンダムの腹部にはコアファイターはなく、ラストシーンはブースターの付いたイスで対応するはずだったそうです。ところが、安彦先生が「やっぱりあのビジュアルイメージが大事だ」ということで、途中で「コアポッド」という脱出戦闘機が組み込まれました。それくらい、あのシーンは名シーンだったと言うことでしょう。そういう名シーンを生み出した以上、コアファイターにもGファイターにも、たとえリアルじゃなくても、現実的にはあり得なくても価値はあったのです。

 ただ、テレビ版後半でGブルイージーとGスカイで出撃した話。あれはイマイチ不明で、そもそも宇宙でGブルってのも変ですが、戦闘中にGアーマーに合体してるんですよ。Gスカイのコアファイター、合体するためには逆に付いてなければだめなはずなんです。ということは、あの短時間で一瞬分離して合体していたのでしょうか?謎は深まりますねえ〜。


9/2
今時!ファミコンソフト 「激闘スタジアム!!」 必勝攻略法

 久しぶりの更新ですが、世界一ニッチなネタで書きます。

 ファミコン最高や!プレステ4なんか最初からいらなかったんや!
…なんて声が少し前にファミコンミニが出たときに聞こえた気がします。スーパーファミコンミニはさらにパワーアップして登場したらしく、どちらも30〜50のおっさんがターゲットのようです。「老人ホームにインベーダーゲームが置かれる」なんてギャグがマジになりそうな気がします。

 自分もファミコンはストライク世代なんですが、諸事情で手に入れるのが遅かったので、実際にプレイするよりもシナリオだけ攻略本で追うとか、ちょろっとしか触ってないなんてゲームも多々あります。

 今は仕事が忙しく、ゲームどころではないのですが、やりこんだゲームとしてはセガサターン「ギレンの野望」、スーパーファミコン「ダンジョンマスター」、そしてファミコンは「激闘スタジアム!!」の3本が挙げられると思います。

 で、「激闘スタジアム!!」(テクモ)なのですが、これ、超マイナーな野球ゲームで、ネット探してもあまり見かけません。プレ値も付いてません。実際、そこまでプレ値が付くほどのゲームではありません。

 野球ゲームというのは、基本的にナムコの「ファミリースタジアム」、通称「ファミスタ」が出てから、「実況パワフルプロ野球」(コナミ)が出るまで、一部の例外を除き「ファミスタ方式」と呼ばれるゲームが主流でした。この「激闘スタジアム!!」も、同様にファミスタ方式の野球ゲームになります。

 ただ、差別化されている部分もいくつかあります。

・ホームランやきわどいプレーの際にムービーが流れる
・裏技で女の子モード搭載(したがって実質24球団)
・各選手に守備力や肩の強さ、足の速さが設定
・守備の際、足の速い選手の方がボールを追う能力が高くなる
・投手によって打力が微妙に異なる
・打順、守備位置は試合前にプレイヤーが任意で変更できる
・オールスターモードがあり、その選手はプレイヤーが任意に変更できる
・チームによってBGMが異なり、かつ、そのBGMは1989年当時使用されていた応援歌のパロディ


 ざっと挙げればこのあたりでしょうか。

 このゲームでは、1989年の12球団がモデルになったチームが登場します。コアなファンは誰が誰か予想すると面白いですが、ファミスタと違って名前がひねりすぎているので、ぱっとわかりにくいこともあります。「まてっつ〜に」がクロマティ氏とか。

 CPUモードについては単純で、ある球団を選んで11試合勝利したらクリアです。負けても再戦できます。

 球団によってクリアのしやすい、しづらいはあるのですが、基本的にはどの球団を選んでも、操作ミスと采配がうまくいけば優勝は狙えます。

 優勝を狙う方法。これはひとえに、ファミコン野球ではあるまじき話ですが、スモールベースボールを目指すことです。

 このゲームは守備力が設定され、走力も守備に関係してきます。したがって、ファミスタであった、「Gチームの捕手やまくらに代打おう、そのまま おう がキャッチャー」というプレイはできなくなっています。このゲーム、守備力の確認は重要で、守れない場所を守らせると失策や落球が頻発します。(ただ、キャッチャーの守備力はクロスプレーでもなければあまり関係ないので、打てる選手にやらせるのもアリです。)

 特に外野、センターの守備力と走力、肩の強さは重要(後述)で、これがないと絶対に優勝はできません。したがって、足の速い外野手がふたり(あきやま、ぴらの)がいるライナーズ(モデルは西武)は、かなりやりやすいです。(実際当時は黄金時代です)

 あとは、足の速い選手をできるだけ並べて、スクイズバントでひたすら出塁を目指します。慣れないうちは投手前に転がりがちですが、うまくサード方向に転がすことができるようになれば、大丈夫です。

 走力は、1〜8の数字で設定されており、捕手の肩にもよりますが、7以上だと三盗を阻止できません。通常の盗塁ですと、5以上あればだいたいできます。(ギガンツの なかおう は肩が7あるので、6でも刺されたような。7、8はフリーパスです)

 したがって、足の速い選手を揃えて、ひたすらスクイズ、その後盗塁を試みます。

 で、このゲームなんですが、実はCPUの思考パターンにいくつか欠陥があります。特に重要な欠陥が、「無死または一死三塁でゴロが転がった場合、ファーストアウトを絶対に優先する」という仕様です。

 つまり、ノーアウト二塁かワンアウト三塁になったら、バントで1点が確実にもぎ取れます。

 「でも対CPUは打ってくるから、1点かそこらでは勝てないよ」という指摘もありますが、そこは大丈夫です。

 ピッチャーはひたすら外角に直球投げてれば、意外にホームランは食らいません。むしろポップフライが多いです。

 ただ、センター前ヒットも結構出ます。こっちの打球はテキサス性安打かと思いきやあっさり捕られる反面、「セカンドで取れないか」と思ってもまず取れません。

 ところが、このゲーム、二つ目の欠陥があります。それは、「無死、または一死で飛球が上がった場合、ランナーは無条件でベースに戻り、ボールが落下してから進塁を始める」というものです。つまり、センター前でヒットをもらっても、進塁が遅いのでセンターの肩さえよければ二塁で刺せます。

 それでもランナーがたまる場合があります。これも大丈夫です。ファミスタでも問題になりましたが、「インフィールドフライ」という概念はありません。ノーアウト一・二塁でも、ショートにフライが上がった場合、手前で落としてサード、セカンドとあっさり併殺できます。

 つまり、バント戦術で小刻みに得点を重ねつつ、ヒットを打たれても守備で刺しまくればどのチームでも優勝できます。

 むしろホームランは要りません。ワンアウト三塁なら、4番でもスクイズです。

 ただ、当然ながら人間同士の対戦ではこれらのプレーは使えませんので、あくまでもさっさと優勝してムービーが見たい人向けですのであしからず。


1/6
星野仙一氏の光と影

星野仙一氏が去る1月4日、膵臓ガンで亡くなられたそうです。
享年70歳。早すぎます。

燃える男、闘将、気配り上手な名監督。
多くの人が、その死を惜しんでいます。

ただ、星野仙一氏、いい面が数え切れない分、影の面もたくさんある人でした。

大変暴力的な人でした。

負け試合はベンチ裏で、打たれたピッチャーをぼこぼこに殴ってました。

中日時代の正捕手、中村武志氏は、リードに問題があった試合で即交代させられ、球場を出る頃には「顔の形が変わっていた」なんて伝説があります。

86年頃出た著書の教育論では「時には殴ることも必要だ」と、思いっきり暴力を肯定しています。

あまりに暴力的なので、バンス・ロー選手は「あんなバイオレンスな監督の下では働けない」と恐怖におののき、1年で退団しました。

アロンゾ・パウエル選手は、「そんなに自分が偉いと思うなら、他の選手ではなく、私を殴ったらどうだ?ただ、そうなったら、あなたもタダじゃ済まないぞ。これ以上、みんなを殴るのはやめてくれ!」と、命がけで進言したら、解雇されました。

現役時代は、KOされたら、ロッカールームの湯飲みに当たり散らし、すべての湯飲みが粉々になりました。
(星野氏が割るので)ある日から湯飲みがプラスチックになった際は、球団スタッフに「割れるのにしとかんかい!」とすごんだという伝説もあります。

相手チームや審判に敬意を払わず、たびたび暴力的な乱闘を起こして退場になり、時には審判に暴力を振るって出場停止になったこともありました。
そして、出場停止になったのに「ワシは悪くない。巨人びいきの審判が悪い」としか読み取れない発言をしました。

審判の技能向上のため、コミッショナーがわざわざメジャーリーグから連れてきたデュミロ氏を「審判がなんぼのもんじゃい!」と、子分とともに取り囲み「あんな恐怖を感じたことは生まれて初めてだ」と言わしめて即日帰国させました。

藤王康晴氏が美人局に引っかかった際には、単身やくざの事務所に乗り込み、啖呵を切りました。
後に、そのやくざの組長は「星野は、わしらやくざよりやくざな人や」と言っていたそうです。

派閥を作るのが好きな人でした。

監督に就任すると、前の監督にかわいがられた選手は、あっさりトレードするか、解雇するかしました。
解雇出来なかった選手は二軍で塩漬けにし、永遠に活躍することはありませんでした。

球団スタッフ、コーチばかりか、フロントや親会社、地元マスコミまで自分のシンパで固めました。
強権的でワンマン、イエスマンをかわいがる手法に反発を抱く人も多く、中日と阪神を退団した遠因は、派閥争いで負けたからでした。

野村克也氏は「星野は政治家や」という言葉を言ったとされていますが、名古屋では地元政財界に太いパイプを築き、「ジジ転がしの星野」の異名を取りました。

小心者で、人を育てられない人でした。

日本シリーズにオリンピック、短期決戦では「負けたらどうしよう」という恐怖が先に立ち、全く平常心ではいられない姿が目立ちました。

長い目で、その選手を大切に育てたり、伸ばしたりできず、近藤真市氏、上原晃氏、与田剛氏、森田幸一氏……多くの才能が「目先の一勝」の前に潰されました。

ドラフト1位で獲得した金森隆浩投手が初登板で打ち込まれると「(ワースト記録である1イニング2発の満塁弾被弾)これを記念に消えてなくなれ。2度と俺の前に姿を見せるな!」と冷たく言い放ち、金森は永遠に復活しませんでした。
ファームで好投していた金森を使いこなせなかったのは、中日ドラゴンズ暗黒の歴史の1ページです。

「巨人のようなやり方を許さない」という割に、巨人のようなやり方を好む人でした。

FAを活用した金満補強を、かなり好みました。

逆指名制度があった際には、札束攻勢で多くの有望選手を獲得しました。

練習生制度で囲い込んだ外国人は、ドラフト1で指名するという暗黙の了解を「明文化されてないんだからルール違反じゃない」という理由で、台湾人の陳大豊(後の故・大豊泰昭氏)をドラフト2位で獲得。練習生制度の廃止に貢献しました。

そういう影が多々ある一方、「まあ星野さんだから」で許される、不思議な一面がありました。
(同じことを落合博満氏がもしやってたら、死ぬまで叩かれていたでしょう)

それは、星野仙一という人を支持する人々が、星野氏に「古い時代の、日本の父親」という偶像を求めていたからかもしれません。

あちらには、20年前に亡くなられた夫人もいらっしゃいますし、副官だった島野育夫氏もいます。

そういえば、あの因縁の「島野?星野の間違いだろ!」事件のブレービーこと島野修さんももうあっちに行ってしまっているんですよね。

あちらにいっても、何も困らないんじゃないかと思います。
星野仙一さん、ゆっくりお休みください。

なんだかんだ言っても、どこかあなたが好きでした。
ご冥福をお祈りします。


6/13
十七年の地図

 1999年6月13日。4ヶ月後に17歳になる私がはじめたウェブサイト。それがこのサイトです。

 あれから17年。あと4ヶ月後に、34歳になります。始めたときは、終わりなんて、考えてこなかったのですが、正直この年になるまで続くとは、全く思っていませんでした。

 正直、今、仕事が忙しくて、Twitterですらあまり書き込んでないんですけれども……

 どれほどの方に読んでいただいているのか………

 率直に言って誰も読んでないんじゃないかな、なんて思うこともあるのですけれども……

 別にたくさんの人に見てもらえるから自分の価値が上がるわけでもないので、どうでもいいです。

 ただ、まるでどっかの連載漫画(Hからはじまるアレ)のような更新間隔ですが、常々「今度、このネタで書こうかな」というアンテナは、張っているつもりです。

 頭の中では常に、書いては消し、書いては消しの繰り返しです。

 今年は隔月といいながら、もう半分が過ぎてしまったわけで、何だかなあと思うんですけれど、自分が描く地図は、自分のペースで描きたいと思います。

 十七歳の年に描き始めた地図が、十七年目。

 これから40歳に向けて、一文、一文字を大切に、言葉を紡いでいきたいです。

 誰に読まれようと構いませんが、今後も世に出す以上、責任をもって、書いていきたいです。

 ウェブサイトは趣味で、このサイトを運営しても一銭も儲からないんですけれども、このウェブサイトをのおかげで得た文章の力が、今、私を支えてくれているところがあります。

 だから、今後も、書いては消し、書いては消し……地図作りですね。

 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 2016年6月13日

 SaToshi 拝


1/16
マスコミが書けないCoCo壱番屋・ビーフカツ事件の裏話(ただし推測)

 1月半ばに発覚し、現在Twitter上で大きな騒動になっている、CoCo壱番屋・ビーフカツ事件。たぶん1ヶ月後には誰も覚えていなくなると思うので書いておくと、



CoCo壱番屋の自社工場で異物混入の可能性があるビーフカツが出た。



該当ロットが分からなかったので、そのラインにあった約4万枚のビーフカツを全て廃棄処分した



処理を委託した産業廃棄物処理業者、「ダイコー」は、およそ3千枚を堆肥化したが、残りを「みのりフーズ」に売却



「みのりフーズ」は、あちこちの業者に売却し、その中の一部がスーパーマーケット「アブヤス」店頭にて「ココイチのビーフカツ」として店頭に並ぶ



CoCo壱番屋のパート従業員が偶然そのスーパーマーケットで買い物をしており不審に思って会社に通報、CoCo壱番屋から問い詰められた「ダイコー」が売却を白状



大騒動になる



とまあ、こういう流れ。

 ネット上では、なぜかCoCo壱番屋を批判する人や、「ダイコー」「みのりフーズ」が外国企業だと騒ぐ人がいるほか、なぜか名のあるジャーナリストが「まだ食べられるものを廃棄するからこうなるのだ」と批判して炎上している。

 この問題、ネットや新聞で追いかけているが、どこのニュースもこの問題に潜む構造的な背景について一切報道していない。マスコミが書けないなら私が書くしかない。「普通のサイトはここまでやらない。」この問題の構造的背景を、推測だけで書いてやる。

 したがってお断り。

 今回の原稿は全て推測であり、実際の事実と違っても私は一切責任を取りません。(でもたぶんおおむね正しいという確信があります)
 ですからこの原稿を読んで真に受けて何かしでかしても私は一切関知しません。
 また、今回の原稿は、CoCo壱番屋やダイコー、みのりフーズなどの関係企業を擁護したり、批判したりするものではありません。あらかじめご了承ください。


 先に結論を書いておくけれど、今回の問題は偶然判明しただけであって、氷山の一角でしかないと思っている。おそらく、食品廃棄物を堆肥化している産業廃棄物業者の中で、可食性のある廃棄物を転売している業者は、決して少なくないと思われる。だから、しばらくは、大手外食チェーンが「調べたらうちの廃棄物も転売されてました!」というニュースリリースを出す可能性がある。

 なぜ転売が起きているのか。まだ食べられるものを廃棄するから。それはあながち間違いではないけれど、異物混入事件が起きると「脅かされる食の安全性」とメディアに叩かれる上に、顧客が離れる。したがって、廃棄ロス以上の損害が会社に出る。だったら廃棄した方が賢い。ペヤングがどうなったのか。よく思い出せばいい。

 Twitterで、「CoCo壱番屋はビーフカツをダイコーに売った」と書いている人がいたけれど、これは間違いだ。産業廃棄物処理というのは、廃棄物を出す側(つまりココイチ)が、処理業者にお金を払って委託しているのが一般的である。処理業者は、普通はその廃棄物を処理して、堆肥などを作り、さらに売却益を出す。つまり、CoCo壱番屋は、ダイコーにお金を払ったのに、ビーフカツを横流しされているわけで、二重の被害者であるといえる。

 こういうことを書くと、「いや、産廃業者はカネを払って引き取ることがある」という反論が来る。おそらくだが、古紙回収業者と混同しているのだろうと思う。古紙回収に関しては、若干の謝礼(ちり紙含む)が量に応じて出ることが多い。古紙回収業者と産業廃棄物業者というのは、確かに仕事の形態が似ているので、混同してしまうのも無理はない。こんな辺境のサイトで、推測にまみれた流言を読んじゃう奇特な人なら分かると思うが、そういう人はガンキャノンとジムとイデオンが区別できないようなものだ。別物である。似てるけど。

 ここまで書くと、「じゃあ、なんでダイコーは全部堆肥にしなかったんだ」という疑問がでる。そんなこと、明白だ。堆肥化して売却するより、「みのりフーズ」に売却した方が儲かったからだ。ダイコーは、「ダイキン」という名前でウェブサイトを持っていて、壱番屋以外にも食品関係の企業と取引しているらしい。すでにみのりフーズの倉庫からは、ダイコーから売却された壱番屋ではない会社の食品が見つかっているというので、可食性のある食品の大半は、みのりフーズ(あるいはそれ以外の食品企業)に売却していたとみて間違いはない。

 したがって、ダイコーの会長が「私が一人でやった(他の社員は知らなかった)」という発言は、おそらく嘘だろうと思う。他の従業員(といっても、10人いれば多い方だと思うが)も知っていただろう。あるいは、ビーフカツのお相伴にあずかっていたかもしれない。みのりフーズの経営者の言う、「廃棄物だなんて知らなかった」というのも、おそらく嘘だ。ダイコーの主要業務が産業廃棄物処理業で、食品関係ロスの堆肥化を請け負っていることはウェブサイトにも出ている。そこから大量に物資を受け取りながら、わざわざ段ボール箱を詰め替えさせ(ココイチの名前は出すなと指示されていたらしい)、伝票にも記載せず、現金のみでやりとりしているなんて、どう考えてもおかしい。

 この問題の背景には、近年、産業廃棄物の総量は、ほぼ横ばいな一方で、処理を請け負う業者が増加しているという問題がある。業者が増えると言うことは、競争が増えると言うことだ。廃棄物処理なんて、委託する側からすれば、普通「処理しました」という紙切れ一枚の話だから、できるだけ安いところに渡したいと思うはずだ。ダイコーと壱番屋の取引が、どれほど長いかは分からないが、ダイコー側が「うちは質のいい堆肥にして、売却益も出てますから、他のとこより安く請け負いまっせ!」という営業をかけた可能性はある。

 その結果、壱番屋などメーカーから受け取る処理委託費だけでは、なかなか儲けが出ない。堆肥の売却だって、業者が増えているのだから、高くは売れない。第一、農業や畜産業が、コストダウンのために中国やベトナムの若者を「研修生」と称して奴隷のように働かせている現在、高く買ってくれる農家などありはしない。

 そうなれば、「堆肥にしました」という紙切れと、添付写真のために一部堆肥化し、残りを食品会社に売却した方が利益になる。当初は無償で渡していたとも報道されているので、堆肥にしてもそんなに売れず、かえって置き場所に困るので、「もらってくれた方が助かるわ」という話から「毎回もらってばかりじゃ悪いで買うわ」という話かもしれない。

 実は、ダイコー(ダイキン)のウェブサイトには、従業員数や、年間の売上高や、利益等の情報が一切、記載されていないのである。ただ、産業廃棄物処理業者は、大体中小の零細企業が多い。ダイコーを今回の件で、「カツを横流しして私腹を肥やした」と批判する人がいるけれど、倒産するかしないか、ぎりぎりで経営しているとみるのがおそらく正解だと思っている。そもそも、そんなに儲けたいなら、もっと高いレートでみのりフーズに売るはずである。

 みのりフーズ以降の動きは、「闇ルート」などと呼ばれているけれど、そんな大げさなものではないと思われる。ようは、「訳あり食品」をうまく手続きするルートが決まっているだけの話だ。今回、店頭で販売されたアブヤスやウオダイは、地元では激安スーパーで有名なところだった。アブヤスは、メディアの取材に対し「廃棄物とは知らなかった」と話しているらしいが、「ココイチのビーフカツ」として売った以上、出自がどうやらココイチらしいこと、そもそも壱番屋が揚げ物素材だけ卸すはずがないことくらい、ちょっと考えれば分かるはずである。当然、なにがしかの「訳あり」と考えるだろうし、そんな分けを深く詮索しないことが暗黙の了解だったはずである。

 そして、こういうことが起こると嬉々として詳しく報道する中日新聞が、今回の一件をプレスリリースや役所からの公式声明のみ報道している現状も、推して知るべしである。今回の一件で関係する企業が、中日新聞に広告を出稿している可能性が高いからである。だいたい、ちょっとネットで調べて推測しただけでここまでの構造的問題が分かるのだから、現場で取材をしている記者が分からないはずがないのだ。では、なぜ書かないのか。詳しく書こうもんなら、自殺者に倒産に、ひいては中日新聞の広告収入源が減るからだ。だから、「まだ食べられるのに、廃棄するなんて勿体ない」なんてズレた話を持ち出すのだ。

 こうしてみると、今回の一件は、「デフレ」という社会の構造的要因が大きく関係していることになる。コストダウンしたい壱番屋、コストダウンしたいダイコー、コストダウンしたいみのりフーズ、安く売りたいアブヤスにウオダイ、そして安く買いたい消費者。こういうことを書くと、「つまり安倍のせいだな!」という話が出てきそうだけれど、物事はそう単純ではなく(何でも安倍さんのせいにできる人は正直うらやましい)、構造的問題や背景が根深いのだよ、そういうことまで考えてね、ということを誰か江川紹子さんに教えてあげてください。

あ、名前言っちゃった。


1/11
ゼロから始めるプラモデル

 今年もよろしくお願いします。

 子どもの頃、テレビゲーム禁止といううちの親の哲学で、代わりに与えられたのがプラモデル。そのことを母は悔いていて、未だに趣味としてプラモデルを卒業できない息子のことをよく嘆いています。「俺で血筋絶えるけどごめんな」「それはいいけど、あんた、部屋は片付けなさいね」という話をしたけれど、プラモデルを始めたことに、悔いはありません。
 説明書(図面)を見ながら、工具を使って部品を整え、トラブルが起きてもリカバリ方法を学ぶなど、プラモデルは子どもにとって人格形成に大きな影響を与えうる。高いステージに上がれば、部品を組み合わせて全く違うものを作り出せるし、これまで解決できなかった問題も、解決できるようになる。テレビゲームよりも遥かに高度な趣味だと思っています。だから、もっと子どもたちはプラモデルを作ればいいのにと本気で思っているくらいです。子どもに与えていいゲームは将棋だけです。

 さて、私がプラモデル、模型が趣味という場合、時々あるのが「お、俺、プラモデルやったことないんだよなあ。今度始めようかなー」という気の毒な少年時代を送った男性(たまにいる)とか、「プラモ超ウケるー。あたしもやってみたーい」という女性。実際問題、ファミコン本体とカセットがあれば誰でもできるテレビゲームと違って、プラモデルは入門するのが難しい。はっきり言って、第一歩を踏み間違えて結局挫折するという人がこの世には多すぎます。私の場合、第一歩がうっかりイマイのサンダーバード2号(しかも超特大サイズ)だったので現在まで続いてますが、25年間のプラモ人生、しくじったこともたくさんあります。結局組めなかったキットだってありますよ。なので、これからプラモデルを始めたいという人に対しては、まず言わせてもらうと、少々の失敗にめげないことと、正しい情報を得ること、あとは、人にとやかく言われても(※)気にせず、自分の楽しさと満足を追求すればいいということです。たかが趣味なのですから。

(※この世の中、狭量な方は模型の世界にもいらっしゃって、「ここの部品の使い方がだめ」「ここが下手」「俺の方がうまい」とネット上で難癖を付けてくる方もいます。そういう方はそういう方でいろいろ大変な人生を送っていらっしゃると思いますので、「ああ、そうですか」と取り合わなければいいのです。なお、そういう一部の方を除けば、大体模型界隈の方は初心者に優しく、「お、ここ、頑張りましたね」などと応援してくれる方が多いです)

 始めるには、やはり、プラモデル専門のホビーショップに行くのが一番。私の場合、両親が与えてくれたのは古い爪切りだけだったのだけれど、そういう悲劇は私の世代で終わりにさせたいですね。基本、プラモデル専用のニッパー(タミヤのモデラーズニッパー、2000円くらい)と、デザインナイフ(アートナイフ、クラフトナイフなどとも。)、ヤスリ(ハセガワのミスターツールのやつをメインで使用)、紙やすり(ガンプラでは、あんまり使いません。)、ピンセット(シールを貼るときなどに使用)くらい。5000円もあれば揃うはず。ちょっと値段は張りますが、100円ショップでそろえず、タミヤやハセガワなど、模型メーカーが出している専門の工具を買うのがいいです。

 工具を買ったら、プラモデルを選びましょう。ここで、どういうキットを選ぶかが、最初の成功・失敗に大きく関わります。まず、アニメモデルか、スケールモデルかを選びましょう。ここで本来ですと長々説明しなければ行けませんが、今年から短く簡潔にを意識しますので、ざっくりいいます。アニメモデルはガンダムのプラモデルで、スケールモデルは飛行機や戦車、軍艦など実在するもののプラモデルです。

 プラモデル好きの中には、ガンプラ(ガンダムのプラモデル)などのアニメモデルを低く見て、「ガンプラをプラモだなんて認めないね」なんて人もいるんですが、実際にプラモ屋さんに行くと、普通は店の半分がガンプラで、残りの半分がその他です。まあ、ガンプラの方が初心者向けなので、そっちにしましょう。どうしてもスケールモデルが作りたい人は、Amazonの本カテゴリで、「プラモデル」「入門」で検索かければ入門書がだーっと出るので、好きなのを買って、読んでから作ってください。とりあえず完成させるだけなら、艦船キット以外はそこそこできると思います。艦船キットだけは初心者向けでなく、ちょっとレベルが高いです。理由はいくつかありますが、パーツが細かい上に違いが分かりにくく、艦船モデラーは例外なく軍事史に詳しいので「あそこの機銃がない」「そこに高角砲はおかしい」とまあ、ちょっと作るだけで宗教裁判にかけられますので、やめといた方がいいです。

 さあ、ガンプラコーナーに足を踏み入れたあなた、まずは絶句ですね。「えー、こんなにあるのー!?」そうなのです。ガンプラは、売れまくっているので、ユーザーのニーズに合わせて、いろいろ出ているのです。

「いらっしゃいませ、何かお探しですか?」
「えーっと、ガンダムのプラモデルを探してるんですけど」

 この売り場にあるのが全部ガンダムのプラモデルです。さあー、どうする。

「えっと、あの、アムロの乗ってた、最初のガンダムの」

 初々しいですねえ。今だと「RX-78-2」とか言っちゃうんですよね。ところが、ファーストガンダムだけで10種類以上のプラモデルが出ているのです。ナンテコッタイ。

 ここで落ち着きましょう。箱の所に、ブランドマークが付いているはずです。本屋でもあるでしょ。単行本、新書、文庫本、コミックス、などなど。実は、ガンプラもそういう種類に分かれてます。おおざっぱに言って、こうです。

パーフェクトグレード(PG):1/60スケール統一。大型愛蔵版。1万円くらい。

マスターグレード(MG):1/100スケール統一。ハードカバーの単行本。3〜6000円くらい。

リボーン・ワンハンドレッド(RE/100):1/100スケール統一。ソフトカバーの単行本。2〜3000円くらい。

リアルグレード(RG):1/144スケール統一。時々文庫本サイズなのに、ハードカバーで大きくて厚くて、「お前単行本で出せよ!」って本有るでしょ。あれです。大体3000円くらい。

ハイグレード・ユニバーサルセンチュリー(HGUC):1/144スケール統一。文庫本。1000〜2000円くらい。

ハイグレード(HG):ほぼ1/144スケール。一部1/100有り。新書。その時テレビで放映してるアニメのプラモデルはこのブランドで出る。

ファーストグレード(FG):1/144スケール。早い話が日記帳。パーツ数が少なく、単色成型。普通に組んだだけではきれいに完成せず、ユーザーがいろいろ手を加えて初めて完成するもの。

BB戦士(SDガンダム):ノンスケール。低年齢層向けのSDサイズ。漫画の単行本。部品数が少なく、価格が安い。高年齢層向けの「レジェンドBB」もあり。

旧キット:ほぼ1999年より前に発売されたキット全般。スケールはいろいろ。種類もいろいろ。戦前の書物みたいなもので、これに手を出すと帰ってこられなくなってしまう。

 あとメガサイズモデルとか、いろいろありますが、初心者はHGUCかHGを買うのがいいです。間違ってもRGを買ってはいけません。
 HGUCまたはHG(旧HGを除く)なら、どれを買ってもあまり間違いはないです。色分けも成型色でほぼできているし、シールでフォローできます。作りたいものを買うのがいいです。

 大事なことは、全部作る前からホイホイ買い込んで、積み上げないことだと思います。これは自戒を込めてますが……。プラモデルって、積んじゃうんですよね。今年は僕も、積むより作る方を頑張りたいです。

<よくある質問>
Q.うちにさー、古いガンプラあるんだけど、まだ作ってないんだ。プレミア付いてるかな?

A.付きません。ガンプラは歴史の中で、公式に絶版になっているのが、旧HG「RX−78 ガンダム」だけです。それ以外、多少再生産されないために、ヤフオクなどで少し定価よりプレミア値が付いているキットもありますが、「開運!なんでも鑑定団」に出られるようなものは、基本的な古いガンプラではまずありません。一応限定品は通常より少し高い値段で取引されますが、限度があります。

Q.ガンプラってどこで買うのがいいかな?

A.ジョーシン(キッズランド)、ヨドバシ、ビックカメラなどでは、定価の20%〜30%引きで売ってますし、Amazonは、ものによっては定価の40%引きで売ってることがあります。

Q.なんで積むの?

A.プラモデルは、いつでも何でも買えるわけではなく、その時の生産状況で在庫が変わるのです。よく再生産されるものはいいのですが、あまり再販されないもの(旧キットに多い)の場合、あとで買おうと思うと買えないので、「とりあえず確保」してしまうのです。結果どんどん積まれてしまうのです。